ミュージカル『テニスの王子様』について書くブログ

テニミュ愛好家(男)が愛と妄想を書くためのブログです

「テニスの王子様研究発表会」は、”研究者なりきりプレイ”として秀逸 #テニ王研4th 体験記その1

改めまして…「第4回テニスの王子様研究発表会」、通称「テニ王研」に発表者として参加してきました!

テニ王研って何!?

簡単に説明すると…

ってな感じです。

僕の発表については、以下のエントリーを読んでいただくとして…
tenippttr.hatenablog.com

せっかくこんなにも面白い会に参加したので、記憶の薄れないうちに、それぞれの発表について、サマリーっぽいものとか感想をだだーっと書いていきます! と言いつつ、既に発表から何週間か経過しているので、記憶違い・認識違いも多々あると思いますが、そのあたりはご容赦ください。

当日の実況ログは、こちらからどうぞ。(ツリーでつなげてます)

6/12

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6/19

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構成と音楽からみる『ミュージカル テニスの王子様 4thシーズン』のコンセプト(悠月さん)

最初のお二人は、会場のみでの発表でした。

一番手、悠月さんの発表は、1st~3rdと、4thの不動峰公演(&校内ランキング戦公演)における構成と音楽の使われ方を比較し、4thシーズンのコンセプトを導き出す試み。

4thシーズンの歌詞に頻出する「青春」というワード。これは、原作由来のものではなく、3rdまでのテニミュがプロモーション等を通して掲げていたワードが元になっているのでは?という指摘。発表の中でも触れられてましたが、2ndシーズンの関東氷帝公演のころには、「青春体感ミュージカル」というキャッチコピーが公演ポスターに使われていたこともありましたね。当時、「そこを売りにしちゃう?」というファンからのちょっとした反発もあったように記憶してます。 (参考: 青春体感ミュージカル=テニミュ - Togetter
ん……? そう考えると、2ndシーズン初期の「公式がプロモーションで「青春」と言い出しちゃうことへの違和感と、4thシーズンでの歌詞に「青春」と入ってきちゃったことへの違和感は、なんだか似ているのかもしれません。

なんにせよ、これまでテニミュそのものを表していた「青春」というワード。それが、クリエイティブスタッフの一新を通して、テニミュの中に還流してきたのでは?という悠月さんの考察には、なるほど、と思わされました。

また、発表者の悠月さんからは、4thシーズンでは、これまで使用されていなかった「擬音、環境音」や「芝居BGM」といった要素が加わっているという指摘も。これは、おそらく演出の三浦さんの持ち味というか、SEで芝居のリズムを作る、という一つの演出テクニックなのだと僕は思っています。3rdシーズンの時点で、三浦さんが担当していたTEAM Partyでも、小芝居パートでSEが多用されていたので。(ちなみに…それ以前の3rd山吹公演での黄金ペアとか、数は少ないものの謎SEが入ることもありましたね。今思い出しても、あれは謎。)

ちなみに…数は限られているものの、テニミュのインストの中にはいわゆる「チェイサー」的な楽曲もあるのでは、とも思いました。一般的なミュージカルで多用される、歌唱楽曲終わりに役者がハケるまでの間を埋めたり、次のシーンへのつなぎとして使われる楽曲のことですね。テニミュだと、四天公演の試合開始前のファンファーレとかが、チェイサーに当たるのでは?(ほかの事例も含めて要調査)

青春学園中等部におけるテニスコート設置時期についての一考察(BIGLOVE中島さん)

なんと、テニス歴1年にも満たないというBL中島さん(こう略すと語弊がある)。その経歴で、テニ王研に辿り着き、しかもこんなニッチなテーマを取り上げるとは…!!

で、この発表、「青学のテニスコートはいつ出来たのか?」を探る内容ではあるもののその結論自体よりもそこに至るまでの過程がおもしろい。結論については、この発表の「大オチ」に当たるので、ここでの明言は避けておくとして…(気になる方は、要旨集をご覧ください)。10.5巻に掲載されている「青春学園中等部史」の記述と、現実の出来事を丹念に比較していくと…見事に両者が合致するよ! という話。青学に似た性質を持つ実在の学校で、いつテニスコートが出来たのかを、歴代の航空写真で目視確認するというアプローチにも納得。

それと…BL中島さんの要旨集における「真面目な顔してすっとぼけてる」感のある語り口は、必読です。こういう研究姿勢こそ「テニ王研」の真髄であり、ひいては「テニスの王子様」の面白さの本質なんじゃないかなーなんてことを思いました。

橘桔平のけじめについて(イサナギさん)

ここからは、オンラインでも配信が開始。

橘さんの言う「けじめ」ってそもそも何だ?という疑問からはじまった研究。冷静になって考えてみると、橘さんの行動は不可解で、釣り合いが取れていない。しかも、なぜわざわざ、千歳を加害者にしてしまうのか…?などなど。疑問が尽きないこの試合ですが…。

九州二翼の2人は、我々が思っている以上に「喧嘩上等」な世界に暮らしていて、暴力が身近にある。だからこそ、部外者である我々からは不可解に思える行動を橘も、千歳も取る、というイサナギさんの考察。なるほどそうか、この2人はスポーツ漫画のロジックではなく、ヤンキー漫画のロジックで動いているんだ、と、目からウロコでした。

それと、翌週の質疑応答で、テニミュの歌詞と本論との関連性に言及する質問がありましたが…そう考えると、テニミュ四天宝寺公演を戦った歴代の橘さんたちに、どういう行動原理で「けじめ」をつけようとしていたのか、聞いてみたいものです(前に2ndの上田さんかどなたかがこの試合に関するブログをあげていたような記憶もあるんですが…要確認)

テニスの王子様におけるラケット描写の調査 ― ラケットに見る幸村と越前家のつながり ― (かやのさん)

かやのさんの発表資料は、こちらから。

個人的に、これまであまりラケットに着目して来なかったので、すべての情報が目新しい!

原作とテニミュのラケット破損回数を表にして比較することに、本質的な意味はないのかもしれないけれど(原作でのカウントは物語内での破損回数なのに対し、テニミュでのカウントは舞台上で実際に破損したと思われる回数を計上している)、そんな表をわざわざ作ることこそ、この研究発表会の醍醐味なんですよ! たぶん。

ちなみに…我が家にはファンブックで菊丸先輩の愛用ラケットとされている「DUNLOP レヴェレーション プロ ツアーシリーズ90」があります。この頃のラケットはおそらく廃盤になっているものも多いので、最近のファンブックだと更新されてたりするのかな…(未検証)

カップリング表記の歴史におけるテニスの王子様(タルトさん)

スペシャルゲスト、カップリング表記研究家のタルトさんによる発表。タルトさんの発表資料は、こちらで販売中
僕も購入しました!

タルトさん、以前からちょくちょくWEB記事などでお名前をお見かけしてはいましたが…実際にお話を聞いてみると、研究への情熱というか、掛けている時間が半端じゃない。タルトさんみたいな市井の研究者の営みが、豊かな同人文化を育んでいくんだろうなぁ、とか良くわからないところで感傷に浸ってしまいました。

そんなタルトさんの発表は、カップリング表記に関する分析もさることながら、テニプリリテラシーの高い発表にはさすが、の一言。「跡部様出張攻め」「青学の攻め柱/受け柱」「(2004年夏コミのテニプリスペースが)デカすぎんだろ…」etc.

そして、我が軍勢の話をさせていただくと…菊丸より海堂とか宍戸とかのほうが受け率が高いのか…!というのは、実感にも合致しているな、と(個人的な好みとしては…校内での組み合わせで基本は菊丸受けだけど、対リョーマくんのときだけ菊リョになるよ、っていうパターンが好きです)。

大石攻めのうち90%が菊丸受けなのに、菊丸受けのうち大石攻めが44%という集計結果には「やっぱりね」と思いつつ、こうもハッキリと菊丸の浮気性が数字で出てしまったことに動揺が隠せませんでした(まあ、大石と菊丸で先に「精神的な浮気」をしたのはどっちなんでしたっけ?というのは議論の余地があります。あの日丘の上で同じ夢を語り合ったはずなのに、オレとお前の見ていた夢は、同じじゃなかったのか!?どうなんだおーいし、って話です)。

(あと、質疑応答でプザさんらしき人物から「壇×亜久津」のサークル数を尋ねる質問がありましたが…だったら僕もリョ壇サークルについて聞けばよかった…!!などと少し思いました!!)

キャラクターソングの手塚国光(よつさん&キリミヤさん)

よつさん&キリミヤさんの手塚キャラソン研究。

無印と新テニでの手塚国光の変化が、キャラソン歌詞にも反映されていることが、頻出単語の分析で分かりました!と。無印で頻出の「君」という単語は、新テニでは一度だけしか出てこない。その心は…無印では手塚は「君」のそばにいるが、新テニでは「君」のそばにいない。なぜならドイツに居るから、という見事な分析!

キャラクターソングの作詞者は、曲によってまちまちではあるけれど、そのことが逆に、手塚のパブリックイメージがキャラソンを通じてどのように表出しているか、を分析することにつながっているな、と思いました。たとえば、作詞者が共通の1st-3rdのテニミュ手塚曲を分析したとして、それは三ツ矢先生おひとりの解釈、意図、傾向を見るものでしかなく、それと手塚のパブリックイメージとは必ずしも一致しないわけですよね。(特定のキャラについて、テニミュ歌詞とキャラソン歌詞を比較する研究も面白そう。)

そういう意味でこの研究は「キャラソンを通した手塚国光 受容の歴史」とも言えるかもしれません(「受容」の使い方、合ってる?)。

そういえば、手塚のキャラソンとは関係ない話ですが…テニスのキャラソンといえば。僕が「テニミュ架空脚本」をつくるにあたって、一般的な作詞方法を勉強しよう、と適当にAmazonで発注したこちらの本。

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長太郎の「雨は囁きのカノン」や、仁王の「Awakening Soul」の作詞エピソードが触れられていて、適当に買った本なのに、テニスのキャラソンだ!と勝手に運命を感じたり。

耳に残るは『手塚国光』(市川芯子さん)

手塚国光に関する発表が、続きます。これがいわゆる手塚ゾーン(実行部の方々曰く、ピンポイント視聴の需要に応えるため、関連するテーマは近くに配置しているそうな)。

テニミュに登場する歌詞としての「手塚国光」は、なぜ耳に残るのか。越前リョーマに次ぐ高頻度のフルネーム歌詞が「手塚国光」だそうな。なぜ人は、「手塚国光」とフルネームで歌いたくなるのか。その不思議を解き明かす!

まず、「てづかくにみつ」の7音と休符で8拍のリズムが生まれ、これが4拍子となじみやすい、ということ。そして、ある言葉の持つ「音」がある特定のイメージを呼び起こす「音象徴」という現象を基に、「てづかくにみつ」の音を分析すると、前半に阻害音が多く、後半の「に」「み」が共鳴音を含むため、一単語の中で「ツンデレ」的な響きの良さがあるのではなかろうか。という見事な結論!

どなたかもおっしゃってましたが、許斐先生は割と音の響きを重視してキャラクター名を決めてるそうですね(出典は要調査)。

再び我田引水して、「菊丸英二」を音象徴で考えると…「k」「k」「z」という阻害音の中に「m」「r」という共鳴音と、「e」「i」という比較的口の開きが小さい母音が挟まれている、みたいな分析でしょうか。これはまさに、菊丸先輩の可愛らしさとカッコよさのいい按配が、名前にも現れているということでは…? (ちゃんとウラを取っていないので、適当なことを書いてます。

※参考(?):子音(+α)のみの菊丸英二が刻印された謎のAirPods(筆者所有)

ちなみに、無印10.5巻のP.120 「許斐先生がズバリ答える!! 菊丸英二のヒミツ!!」によると、許斐先生は菊丸命名の理由を聞かれ、「"なんとか丸"っていう名前は、ちょっと可愛らしい雰囲気かな………と。」回答してますね(+記憶が定かじゃないですが、どこかのインタビューで、似たような名前のご学友が名前の由来とおっしゃってたような)

あと本題と全関係のない話ですが…市川さんの発表で音象徴の話が出たとき、「これ、ゆる言語学ラジオで見たヤツだ!ってなりました。
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まだ半分にも満たないですが…一旦ここまで!

早くブログ書かないと、テニソニも4thルド吹公演も、W杯アニメもはじまっちゃうよ!! 全部はじまったらテニ王研の振り返りどころじゃないよ!!! という焦りの気持ちから、とりあえずエントリーをあげてみました。

あのですね…テニ王研、とにかく楽しかったんですよ! 月並みな言葉ですが、対面でのイベントっていいな、って本当に心の底から思いました。聴衆のリアクションと、それに応える発表者。両者のグルーブが生み出すうねりは、何者にも代えがたいな、と。

あとTwitterでも書きましたがテニ王研の最大の魅力は、単なる推し語りプレゼンじゃなくて調査・分析に基づく研究発表という形を取っているところだな、と。オタクが好きなものを情熱にまかせてプレゼンする姿は、もうそれだけで面白いに決まってるんですが、そこに論拠が求められることで発表者本人ですら気付かなかった新たな発見が得られることがあるわけで。あとこの会の面白さは内輪ノリっちゃ内輪ノリなんですが、「ごっこ遊び」とはいえまがりなりにも「研究発表」なので、どのプレゼンも参加者のリテラシーにあまり依存しない仕組みになっていて、内輪の輪が外に広がっていく、そんな素敵な場になっていたんじゃないかなーと思いました。

そんな素敵なテニ王研4th、このブログに書いた発表以降も、まだまだ面白い発表がたくさんあったので…Part2もちゃんと書いて、後日アップします!!(たぶん)